着物あれこれ ~女紋ってなあに?
「女紋(おんなもん)」というのをご存じですか?
黒留袖などに家紋を入れているのを見たことがあると思います。男女でサイズが違うのをご存じの方は、お着物に詳しい人です。男性の紋の大きさは一寸ですが、女性の紋は五分五厘で、女性の紋は、男性の紋の大体半分くらい…という感覚ですね。これを「女紋」と表現します。
もう一つが、「家紋以外に女性が使う紋」という意味での「女紋」です。この文化は主に関西エリアの商家で江戸時代くらいから使われだしました。面白いのが、この場合は女性の実家の家紋ではなく、「嫁の実家の母の紋」というところです。自分に置き換えると、母方の実家の紋ということになり、これはかなり複雑です。これを「母系紋」と呼び、娘・孫娘・ひ孫娘…と娘だけが継承していきます。
婚家の紋を女性らしくかわいくアレンジした紋も「女紋」といいます。これは「アレンジ紋」と言い、旦那さんと微妙にデザイン違い…というイメージになります。女性なら誰でも使える「通紋(つうもん)」というものもあります。
これらもすべて「女紋」というカテゴリーですが、まだあります。
旦那さんのお家の女性にのみ伝わる「替え紋(かえもん)」というのは、親族全員で紋付の着物を着ると、大姑・姑さんと同じになるだけでなく、旦那さんに男兄弟がいた場合はそのお嫁さんたちとも同じ紋を着物にいれることになります。要は旦那さんの親族の女性はみな同じ紋になるということです。
自分専用の「私紋(わたくしもん)」という紋もあります。これは、実家や婚家、替え紋など関係なく使います。最近流行している「女紋」はこのケースを指しています。友達や兄弟と全く同じ手ぬぐいやハンカチなど、間違えてしまいそうなものに入れます。好きな紋を選んで使います。皇族の「御印」がこれに近いかもしれません。
家紋に厳しくなく、身内に不幸があったときに「あれ、うちの家紋なんだっけ?」という家なら「私紋」も気軽に使えますが、家紋に厳しい家や、「替え紋」を大事にしているお家などもあるため、「私紋」を使う場合は結婚前にしっかり話し合ってお互い納得するのをお勧めします。話合いの結果、「私紋でいい」となった場合でも、話し合ってから紋を入れてもらいます。
無地のトートバックなどに、家紋スタンプで入れるのも見受けられます。既製品の内側に入れてみたり、小さな子のワンピースの背中側に小さく刺繍で入れてみたりと、さまざまに使えるので、取り入れてみてはいかがでしょうか?
(読者:M・Aさんより)