終止符のない人生【図書館からおすすめの一冊】


 
反田恭平さんの名前を知ったのは2021年のショパンコンクールだった。世界2位、日本人51年ぶりの快挙。長年クラシックから離れていた私は反田さんのことを知らなかった。調べてみると、すでに有名な方でコンサートチケットは取れないほどの人気だった。4位だった小林愛実さん、三次予選まで進んだ角野隼斗さんを知ったのも恥ずかしながらこの時だ。それから半年後、反田さんの自伝が発売される。前半はピアニストとして、後半は経営者としてのエピソードが書かれていて一気に読める。特に前半のピアニストを極める姿勢は凄まじく、生まれ持った才能と目標に向かって強い信念を持って努力できる力、いつでも全力で取り組む真摯な姿勢は鬼気迫るものがあった。

 
ショパンコンクールを勝ち抜くために自身の肉体改造から選曲、審査員、コンサートホールまで細かく分析し攻略法を練っている。どれもこれも並大抵のことではないが信念を持って、常に全力投球で実戦している。そんな反田さんだから応援する人が集まる。予選を勝ち抜いていく過程は読んでいてハラハラドキドキした。

 
モスクワ音楽院留学の話はいつの時代かと思わせる。入学時には寮からキャンパスまで徒歩3分と知らされていたが実際は30分かかる距離、寮の周辺はかなり治安が悪く命の危険を感じる環境、寮のシャワールームはお湯が出ない設備など、読んでいて面白いのだが、一方で現代ロシアという国の恐ろしさを感じた。

 
20代という若さでもう自伝がかけるほど反田さんの人生は濃密である。そして、また新たに学校設立という夢に向かって進んでいる。タイトルどおり終止符のない人生。読むとエネルギーが湧いてくる一冊だ。

 

加西市立図書館

 
 

書籍情報

『終止符のない人生』
反田 恭平/著
幻冬舎
 

コラム 西脇市