『白霧学舎探偵小説倶楽部』(図書館からおすすめの一冊)

東京大空襲後、美作宗八郎は東京から田舎の名門校白霧学舎へと疎開しました。学生も軍需工場で働くことが政府によって決められ、授業のなくなった学舎で、美作は同い年の滝幸治と斎藤順平に誘われて『探偵小説倶楽部』にはいります。しかし戦争と田舎のため小説が手に入らないから、と彼らは実際にこの場で起きている連続殺人事件を捜査していました。そんなある日、アメリカ軍の飛行機墜落の事件が起こります。生き残ったパイロットの行方を日本軍や探偵小説倶楽部が探す中、美作に最初に声をかけた林屋健太が殺され、美作はいっそう事件にかかわることになります。

戦時下の情勢がそこかしこにあらわれていて、美作が学舎に入って初めにしたことは自分の歓迎会用の大根泥棒でした。料理用の酒をくすね、甘味を隠し持つ者も学舎にはいます。村では赤紙で呼ばれた男たちもいて、戦死したり生き残ったりした者もいました。軍需工場での作業や暮らしの質から戦況が芳しくないと理解しつつ、たった一人やめるわけにはいかないし、次は戦場に自分が行かなければいけないかもしれない、という諦念の混じった覚悟がありました。死ぬ覚悟と殺される恐怖の奇妙なバランスの上に多くの青年たちがたっていました。

作者の岡田秀文はミステリーのほかに歴史小説を多く書いていて、戦中の様子を特徴的に描き出しています。なにより最後の最後まで謎を残し、解決はそれまでの捜査も踏まえ鮮やかに判明していきます。連続殺人犯を悪人と断じるにはせつない事件の真相と青年たちの青春の終わりをぜひ確かめてください。

西脇市図書館 福田

書籍情報

『白霧学舎探偵小説倶楽部』
岡田秀文/作
光文社出版

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