好きな日本語――いただきます【読者からの投稿コーナー】
兵庫教育大学 中国からの留学生 鄧 宜娟(とう ぎけん)さん
「いただきます」は、食事を始める際の日本語の挨拶である。日本語を勉強し始めたばかりの時、この言葉が中国語に無いので少し気になった。よく調べて、「いただきます」の日本語に含まれている日本人の感情を理解できたら、だんだんこの言葉を好きになった。
「いただく」は「もらう」「食べる」「飲む」の謙譲語、丁寧語である。「いただきます」はこの「いただく」から派生したもので、「ます」をつけないと挨拶として機能しない連語である。中国語に無いのは、中国人が食事する前にあまり挨拶しないからである。今の漫画やドラマでこの言葉が強引に訳されると、中国語の「では、食事を始めます」になってしまう。この訳し方は中国人の食事がいつも一番年上の人が、「では、食事を始めます」と言ったら始まるという習慣に応対している。これは本来の意味はこれから食べようとしている相手ヘかける言葉であり、「いただきます」とはやや性格を異にする。それで、このいただくの気持ちは伝えられなかったのだと思う。
この言葉の由来の一つの説は、日本の道徳やマナー教育などにおいて、食材となった動植物の命への感謝だということである。これによって、食材の命を頂いて、自分の命を養わせてもらう、その感謝を意味しているという。それだけではなく、料理を作ってくれる人、野菜を作ってくれる人にも感謝の気持ちを表している。家庭では母親に対して、人を訪ねる時はホストに対して感謝している。この精神は日本人が食材を大切にして、ご飯を出来るだけ食べきることへの習慣にも表れている。
この背景を知ってから、私も食事する時に日本人を真似して、手を合わせて、「いただきます」と言うようにしている。