サクリファイス【図書館からおすすめの一冊】

 

 

sacrifice(サクリファイス):動詞→犠牲にする。生け贄(いけにえ)にする。名詞→犠牲。生け贄。

高校時代、陸上競技でインターハイに出場し、中距離走で優勝を果たした白石誓(チカ)。18歳で自転車競技に転向し、大学卒業と同時にスカウトされ、プロのロードレースチーム“オッジ”に所属します。ロードレースは個人競技ではなく団体競技なため、役割を分担して戦いに臨みます。チームが勝つために絶対的なエースを配し、他のメンバーが全員アシストにまわります。チカもそのアシストの一人です。

国内最大級の大会“ツール・ド・ジャポン”は、海外のプロチームも参戦するレースで、チカもオッジのメンバーとして初めて出場することになります。大会3日目、作戦として飛び出したチカは、後方集団が予想以上に遅れたこともあり、そのままゴール。ステージ優勝するとともに総合1位に躍り出ます。4日目、リーダージャージを身に纏いながらも、アシスト役に徹し、エースを上位に導きます。そして、最終日もそのまま順調にレースをすすめ、エースが念願の総合優勝を果たすのでした。

このようにご紹介すると、純粋なスポーツ小説のようですが、実は、サスペンスたっぷりのミステリー小説なんです。それでは、すこしだけ…

オッジのエース石尾には黒い噂があります。3年前、圧倒的才能を持った新人が現れ、彼の座を脅かそうとします。あるレースで先頭集団にいた二人。下りのカーブで石尾が新人に接触し、新人が落車、ガードレールに激突します。結果、脊髄損傷で下半身不随に…。事故か?故意か?謎のままです。

それから時が経ち、オッジは、ロードレースの本場、ヨーロッパに赴き、ベルギーからルクセンブルグまでの5日間の過酷なレースに挑みます。ここで新たな惨劇が…。

『サクリファイス』シリーズの記念すべき第1作(2007)であり、第10回大藪春彦賞および第5回本屋大賞2位入賞。こののち、「エデン」(2010)、「サヴァイブ」(2011)、「キアズマ」(2013)、「スティグマータ」(2016)と続きます。スリルとサスペンス、そして、さわやかな清涼感が同時に味わえる一冊です。 ※ 一気読みにご注意!

多可町図書館

書籍情報

『サクリファイス』

近藤 史恵/著

新潮社

 

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