超高速 西国33番「順打ち」巡礼編その6【9興福寺】OB首長~気まま旅~
第9番札所 興福寺 南円堂(こうふくじ なんえんどう)
春の日は 南円堂に かがやきて 三笠の山に 晴るるうす雲
藤原摂関家の聖地・・・唯一の「不空羂索(ふくうけんじゃく)観音」
奈良の興福寺は巨大寺院であり、国宝や重文だらけの寺である。この日も国内外の観光客で溢れていた。その一角に香煙の絶えない八角円堂の南円堂があり、観光地化した境内の中で、ここだけが深い宗教色を漂わせている。興福寺は政治に揺れた巨刹であり、歴史好きの私にはその存在そのものに関心がある。藤原不比等が平城京を見渡せる春日山麓の当地に造営したと伝わるから、冬嗣が北家の繁栄を願って建てた南円堂は100年ほど後に建ったことになる。
藤原北家(摂関家)の特別な御堂だった南円堂がなぜ西国33番に含まれているのか、かねてより疑問だった。ご本尊は「不空羂索観音(国宝・秘仏)」であり、あまり名を聞かない観音様だ。調べてみると「あらゆる生き物を救う」という意味を持つ観音様で、古代には数多く造られたという。しかし後に藤原氏がこの観音様を「国家で崇拝する対象」としたため、庶民層には縁が薄くなった。平安京から大和・熊野へ向かうには、嫌でも興福寺の威容を目にするはずだ。藤原貴族のみが厚く崇拝した南円堂の「不空羂索観音」だが、中世以降は観音巡礼に組み込まれ、一般民衆の信仰の対象になっていった。人々を救済するため7種の姿となって現れた「七観音」のすべてが西国33所巡礼に揃ったことになる。
【一言アドバイス】
マイカーを利用して「順打ち」で廻れば、ここまでが2泊3日の行程での一区切りとなる。興福寺では駐車場を心配したが、回転が速いのか、直ぐ近くで留められたので安堵した。奈良に来て、いっぺんに外国人客が増えた。参拝者が多く、納経所での朱印に時間がかかる場合があるので注意が必要だ。
興福寺は(巡礼とは別に)ゆっくりと訪ねたい寺院である。目の前の五重塔や東金堂などの建物が国宝で、なんと国宝館まで別にある。人気の阿修羅像をはじめ、日本の国宝仏像の17%がこの寺の所蔵だというから驚く。日程が許せば、隣接する国立博物館や春日大社などを組み入れた奈良周辺のプラス1日コース(3泊4日)を考慮に入れられたら更に功徳と楽しみが高まると思う。
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