『食堂のおばちゃん』(図書館からおすすめの一冊)

昼は定食屋、夜は居酒屋の「はじめ食堂」は姑の一子と嫁の二三の息の合った二人が営んでいます。元々は洋食屋として開業しましたが、料理人だった一子の夫の孝蔵が亡くなったため家庭料理を提供する店に変更し、閉店の危機を乗り越え東京の佃で50年、地元の人や近くで働く人たちに愛されています。

食堂に来る人たちは夫婦のすれ違い、お店の跡継ぎ問題、仕事などそれぞれ様々な悩みを抱えています。けれども酸いも甘いも噛み分けた二人の「おばちゃん」の料理とサービスと踏み込みすぎないやさしさに、お客さんも読んでいるこちらもほっと一息つけて、明日への元気が出てきます。

手際よく料理を作る様子、コストとメニューのバランスを考えての仕入れ、お客さんとのやりとりなど生き生きとした描写は社員食堂で働きながら作家デビューを果たした著者ならでは。食堂の仕事の大変さだけでなく働く楽しさ、お客さんにおいしいものをたくさん食べさせたいという思いが伝わってきます。もちろん出てくる料理もおいしそうで、味見のシーンはお腹が空き、お客さんがメニューの選択で迷っているシーンではこちらも一緒に悩んでしまいます。巻末には作中に登場したレシピも掲載されていて、食べてみたくなったら実際に作ることができます。

はじめ食堂をまた訪れたくなった人は、佃島の岸惠子と謳われた若き日の一子と孝蔵が食堂を開店した時の物語「恋するハンバーグ」と、二三と一子の二年後を描いた続編の「愛は味噌汁」をぜひどうぞ。

丹波市立市島図書館

書籍情報

『食堂のおばちゃん』
山口恵以子/著
角川春樹事務所

コラム