四隣人の食卓【図書館からおすすめの一冊】


 
少子化対策として韓国政府が打ち出したのは、「夢未来実験共同住宅」事業。都心にぎりぎり通勤できる圏内で、商業施設1つない人里離れた山間部に12戸のマンションを建て、「入居後10年までに子どもが3人になるよう産み育てる」事を条件に入居者を募った。
 
やがて4組の夫婦が厳しい審査を通り、共同住宅での生活を始めた。4組の夫婦には、子どもが1歳から5歳まで6人いたが、できたばかりの共同住宅に保育園は無く、住人の中に元幼稚園教諭で専業主婦のホン・ダニがいる事もあって、4組の夫婦が協力して子ども達の保育をする事になった。ホン・ダニは自分の「正しさ」を持って、共同保育を運営していくのだが、会社員と専業主婦、会社員とフリーで家で仕事をする妻、専業主夫と働きに出る妻など、互いの生活状況の違いや限られた人づきあいの中でストレスが生まれ、それぞれの関係がぎくしゃくし始める。結果、4組中3組の家族がこの共同住宅を出て行ってしまう事態になるのだが…。
 
訳者のあとがきとして、韓国で本作に対する反応が真っ二つに割れていると書かれている。女性は共感し、男性からは「極端な話」「妄想のつなぎ合わせ」との意見が出ているのも面白い。お隣韓国の作品だが、人の悩みは万国共通のようで、そのまま日本社会を見ているようなお話であった。

 
加東市東条図書館
下山 和子

 

書籍情報

『四隣人の食卓』
ク・ビョンモ/著
小山内 園子/訳
書肆侃侃房
 

コラム 加東市