『いつまでも自分の足で歩こう』【アンド・スマイルinterview~ドイツ式フットケアつめきりん 大内のり子さん】
アンド・スマイルinterview
『いつまでも自分の足で歩こう』ドイツ式フットケアつめきりん 大内のり子さん
2018年に丹波篠山市で初のドイツ式フットケアサロンがオープン。看護師としての29年間の経験とドイツのフットケア技術で足の様々な悩みを解決してくれる、フットケア指導士 大内のり子さんに、フットケア事情とフットケアへの想いを語っていただきました。
――フットケアとはなんですか?具体的にどんなことをされているのですか?
仕事について聞かれたとき、フットケアをやっていますと答えると、マッサージ系を連想される方が多いのですが、フットケアとは一言でいうと足のトラブルの改善です。主に爪のケア、足のケアで、具体的には巻き爪の方の痛みをとったり、爪を整えたり、外反母趾の方なら痛みを和らげたり、うおのめやたこの処置をしています。
足のトラブルの原因の一つ、足や爪の変形ですが、ある程度は遺伝もあります。親御さんと同じ要素を持っていることで、自身も同じようなトラブルが起きる場合も多いです。ただ、例えば巻き爪に関して言えば、具体的に大きな理由が二つあります。
ひとつは、合わない靴を履いていること。パンプスやヒールなどつま先のきつい靴を履いていると足の先が締め付けられ、靴に爪があたって巻き込んでいきます。
ふたつめは、浮き指です。足指が浮き上がりしっかり接地しない、あるいは接地できない状態です。爪をよくみると、うっすらと縦の線が入っているのがわかります。爪は本来、その線に沿ってまるくなろうとするんです。それでも巻き爪にならないのは、巻き込もうとする圧と踏み込んだときに地面からかかってくる圧とちょうどいいバランスがとれるからです。やわらかくラウンドした状態になるのが正しい爪の形なんですが、浮き指の場合、足指が地面につかないので、巻こうとする力ばかりが働いてしまう。それで爪が巻いてしまうんですね。だから、足を見せていただいて、それぞれの原因をこちらで調べてアドバイスをさせていただいています。
施術の流れですが、まず足湯で足をあたためてきれいにします。それから爪や角質などの施術。終わったらリンパの流れを良くするリンパドレナージュも行います。足のトラブルがある方は、浮腫みや冷えがあったり、循環が良くない方がとても多いので、少しでも足が軽くなって帰っていただけたらと、ゆっくり1時間半から2時間くらいかけて、お悩みなどのお話を聞きながらやっています。ティータイムをとることも。
――このお仕事を始めようと思ったきっかけは?
29年間看護師として病院に勤務していた時の、ある患者さんとの出会いがきっかけになっています。手術前の準備の際、患者さんが靴下を脱ぐと、親指の爪が横を向いて5センチほど伸びていたんです。あまりの爪の変形に、看護師もみんなひるんでしまい切れません。そのときたまたま応援に来てくれていた元部長さんがフットケアを勉強されていて、その方がきれいに切ってくださったんです。そのときの技術がすばらしくて。すると、同じ部屋にいた患者さん達がその様子をみて、「実は私も…」と口々に足のお悩みを打ち明け始めたんです。その時「足のお悩みって、言わないだけで実はみんなあるんじゃないか」 と思ったんです。だからすぐに元部長さんにお聞きして、専門の勉強をはじめました。
免許を取得してからは、空いている時間で足の悩みを抱えた患者さんのつめきりを始めました。でも本来の業務があるので、ケアしてあげたくても時間がない、というもどかしい気持ちがありました。また、そうしているうちにふと気になったことも。爪が変形していたその方は入院していたときに、運よく専門の技術を持った人にケアしてもらうことができたけれど、ケガをしなかったら、この先もこの爪でずっと過ごされていたのかな?って。普通ならそんな機会はなかなかないんじゃないだろうか。じゃあ、自分は病院から離れてフットケアサロンを開き、元気だけれど足や爪のトラブルを抱えた方のお悩みを解決しよう、と。
ということで、長年働いていた病院を辞める決心をしたんです。
――どのような勉強をされ、資格を取得されたのですか?
店名に『ドイツ式フットケア』とありますが、フットケアの先進国はドイツです。ドイツには、足病医というくるぶしから下を専門にみるお医者様がいらっしゃいます。またフットケアサロンも美容院と同じくらい身近な存在です。ドイツではフットケアの大切さは認知されているので、数年前からこの資格が国家資格になっています。日本はまだ民間資格ですけどね。だから、民間のスクールに通って、足のことを専門に勉強し資格をとります。
あと、最近は、医療界でも足の大切さが見直されています。医療関係者の中でも、看護師の中でも専門的に勉強をしたいというニーズが高まってきていますから、民間の学校が医療関係者を受け入れる体制が整ってきています。日本フットケア学会では、制度を設け、フットケア指導士を養成しています。私は看護師ですので、民間の資格とフットケア指導士の資格も取りました。民間の資格と医療関係者の資格の両方を持っているので、例えば糖尿病や循環器疾患などの方の足のトラブルに対して、この状態は私が診られるのか、それとも病院で医療的に処置されたほうがいいのか、判断しながら対応しています。
――施術をされていて嬉しかったエピソードはありますか?
10年間、足の指の変形(外反母趾)で悩んでいた方がいらっしゃいました。爪がかなり変形していました。外反母趾については医療的な分野になるので、私のほうでは、爪を中心にケアさせてもらいました。その方の願いは「夏に裸足でサンダルを履いてみたい」とのことでした。いままでは、サンダルを履くときは、恥ずかしいからとパンストや薄い靴下を必ずはいていらっしゃったようです。その方が、うちに来て3か月目に裸足で真っ赤なサンダルで 「ちょっと来てみました」ってサロンに寄ってくださったんです。10年コンプレックスに思っていたことが克服できたのかな?って、この仕事をやっててよかったなって、すごくうれしくなりました。
――フットケアの大切さ、フットケアへの想いなどをお聞かせください。
つい最近、電話相談を受けたのですが、その方は2年くらいずっと足の爪の変形で悩んでいました。自分だけがこんな変な足をしていると思ってらっしゃったんですね。でも、私のところに来られる患者さんは、同じような症状の方ももっとひどい方もいらっしゃいます。心配はいらないし、きちんとケアしていきましょうとお伝えしたら、その方は涙ぐまれたんです。安心されたんでしょうね。
みなさん、来られるまでにすごい壁があるようです。半年くらい大事にチラシを持っていて悩みに悩んでから来られています。「靴下脱いで大丈夫やろか」「こんな足を見せても大丈夫やろか」って。
今回、取材の機会をいただき、このように紹介していただけるのが嬉しいんです。「困っているのはあなただけじゃない」っていうことをぜひ知っていただきたいですし、お店にも気軽に来ていただきたいです。まずは相談だけ、状態だけ見せていただいて相談だけ、というのも歓迎です。
私のお店では、表面にあらわれたトラブルを改善するだけじゃなく、その原因を探り改善して、いずれはここでのケアを卒業していただきたいというのを目標とし、根本的な解決を目指しています。
『いつまでも自分の足で歩けるように、自分の足で行きたいところに行けるように』というのが願いです。
10月からはSMILEハウスでも定期的に出張施術を始めることになり、今まで以上に多くの方にとって身近な存在となる『ドイツ式フットケアつめきりん』の大内さん。
「この記事をきっかけに、皆さんもぜひ一度ご自身の足と向き合っていただければ…」とおっしゃっていました。
大内のり子さん
昭和44年生まれ。
看護師・ドイツノイエンブルグボトロギーシューレ認定プロフェッショナルポドロジスト・日本フットケア学会認定フットケア指導士の資格を持つ。
2018年4月、丹波篠山市にてフットケア専門サロン「ドイツ式フットケアつめきりん」開業。
猫が好きで、趣味は猫の動画鑑賞。