第八の探偵【図書館からおすすめの一冊】


 

今、作中作ミステリーがおもしろい!
 

作中作とは、小説の中に登場する小説のことです。最近の代表作としては、本屋大賞翻訳小説部門など数々の賞を獲得した、アンソニー・ホロヴィッツの『カササギ殺人事件』があります。しかし今回は、まだそこまで有名ではないけれど、私が最高におもしろかったと思う『第八の探偵』を紹介します。
 

この作品には、25年以上前に書かれた七つの短編推理小説が、作中作として登場します。その短編小説の著者グラント・マカリスターは、孤島で隠遁生活を送っていますが、そこへ小説の復刊を持ちかける編集者ジュリアがやって来ます。二人は作品を今一度読み返していきますが、一つ一つの短編を読み返して議論を重ねていくうちに、思いもしなかった過去が明かされていき、最後には驚愕の事実が!読み終えた後、あなたはきっともう一度読み返したくなるでしょう。
 

この作品の魅力は、七つの短編が非常におもしろいだけではなく、それぞれの作品に、ミステリー黄金時代、特にアガサ・クリスティーへのオマージュがぎっしり込められているところです。しかも、ミステリー好きにはたまらない、フーダニット、容疑者が全員犯人かもしれない、孤島で発見された十人の死体(他に生存者は誰もいない)…などなど一度は聞いたことがあるパターンのオンパレード。「あ、これ知ってる!これは例のアレだな。」と思って犯人を予想するのですが、最後にはその予想が鮮やかに覆されるのです。
 

ミステリー好きの人にはもちろん、そうでない人にも、短編なので読みやすく、ミステリーってこんなにおもしろいんだと感じてもらえるはずです。また、最後に驚きの事実が暴かれた後には、人間の弱さ、悲しみ、やりきれなさなどが伝わってきて、作品の奥行を感じます。
 

あなたもぜひ、作中作のおもしろさを体験してみてください。

 

 
三木市立吉川図書館
福井 純子

 

書籍情報

『第八の探偵』
アレックス・パヴェージ/著
鈴木 恵/訳
早川書房
 

コラム 三木市