カラフル【図書館からおすすめの一冊】
死んだはずの僕の前に「おめでとうございます、抽選にあたりました!」と天使が現れました。
主人公の僕の魂は、大きな過ちを犯して死んだ罪で、通常なら輪廻のサイクルから外され、二度と生まれ変わることができません。しかし、抽選に当たったため、再挑戦のチャンスが与えられました。つまり、ラッキー・ソウルというわけです。
しかし、この時点で僕の前世の記憶はありません。そんな僕に天使は、再挑戦を説明します。下界で、もう一度誰かの体を借りて過ごし(これをホームステイと呼んでいる)前世で犯した過ちを自覚することです。過ちを自覚した時点でホームステイは終了し、魂は人間の体を離れ、輪廻のサイクルに戻ることができるというのです。説明を終えた天使は、不安がる僕をよそにホームステイ先の人間の体まで僕を連れて行きました。
そして、気が付くと僕は小林真になっていました。正確に言うと、小林真の体を借りている状態で、魂だけ僕です。
天使からの事前情報によると、小林真は現在中学三年生、三日前から危篤の状態が続いていました。そして、小林真が新で魂が抜けたすきに僕が入り込んだのです。この瞬間から僕のホームステイが始まりました。
僕は、真として生活を送る中で、家族や周りの人に対して抱いていた当初のイメージが少しずつ色合いを変えていくことを感じます。人はきれいな色も、汚い色も、いろんな絵具を持っており、この世があまりにカラフルだから迷うのだと気づくのでした。
十代の多感な時期だからこそ、敏感で、傷つきやすい。そんな主人公や登場人物たちが丁寧に描かれています。
多可町図書館 藤本 渚月
書籍情報
『カラフル』
森 絵都/著
理論社