北海道編 函館・余市・岩見沢・夕張の旅(その2)【OB首長~気まま旅~ 】

函館市と多可町・・どっちが過疎?

函館市の人口は26万人弱。有名な観光地で経済力もあるはずだ。だがこの地は過疎地域の指定を受けている。25年間の人口減少率が19%(指定基準)を超えるのだ。「多可町が過疎指定とならずに函館市が該当する」この珍現象を知る人は行政関係者でも希だ。

過疎対策事業債を有効に活用できるため財政面では羨ましいが、直近の急激な人口減少は、この都市の根幹を虫食んでいる。道南行政の中心地であり、かつ国際観光都市「函館」にして過疎なのである。そんな視点で旅をすると、北海道の違った困惑と様相が見えてくる。

滞在して函館山で夜景を楽しみ、湯の川温泉で海鮮料理をほおばり、外貨を落とすのがせめてもの協力なのだが、「気まま旅」は欲張りの行程であり、先を急ぐ。

レンタカーで40分ほど北上すると、富士山の山頭部が火山爆発でなくなったような異形の駒ヶ岳(1131m)が夕闇のなかに見えてきた。最初の宿泊地は、札幌方面に向かう高速道路(道央道)の起点である大沼公園の宿とした。ご多分にもれず、宿泊客の大半は外国人(主に中国人)であった。

 

ニセコは雪質と自治で有名な町

フロントで余市までの所要時間を尋ねたら「4時間」との答えだ。多可町からだと東は名古屋、西は広島まで行ける。やっぱり北海道は広い。

平日だったためか、ほとんど車は前後に見えず、「道央道」は貸し切り状態である。口笛を吹きながら高速運転ができた。黒松内南ICで高速道路と別れ、道道5号線を北上した。嶋町長(8月で町長職を勇退されたが町長と記す)との待ち合わせ時間まで少し余裕が出たので、ニセコ町役場を訪ねようと思い立った。

ニセコに降る雪はパウダースノーとよばれ、雪質は世界一と聞く。国際スキー場は毎年、欧米豪からの入り込み客であふれる。また我が国で初めて「まちづくり基本条例」を制定したことでも有名で、行政・議会関係者の視察が絶えない自治の模範町(人口5100人/面積197平方キロ)である。また羊蹄山(蝦夷富士1898m)でも知られている。

ニセコ(有島記念公園)から見た羊蹄山

ニセコの片山町長は、まちづくりの政策形成能力の高い有能な首長で、私は以前より彼の柔和さと優雅さを兼ね備えた人となりと主張に注目してきた。「日本を代表する首長の一人」と言って間違いない。残念ながら外出中で出会えなかったが、役場に名刺と多可町のお土産(多可町制作の「敬老のうた」のCDと多可町パンフ)を置き「よろしく!」と伝言してきた。

ニセコから余市まではまだ遠く、山間の道を走りに走った。

NHK朝ドラ「マッサン」の舞台 余市に入る

余市に入ったのは昼を少し過ぎた頃で、嶋町長との約束時刻より早かった。JR余市駅の付近を車で巡り、標識に沿って「道の駅」をめざした。

JR余市駅

余市町は北海道の町村のなかで一番人口の多い町(人口19200人/面積140平方キロ)である。大陸風の立派な駅舎を見ても、北国の町の威厳と風格が漂っている。いっしょに食べる夕食は「きっと海鮮料理だ」と勝手に決めつけ、昼食は軽めの和蕎麦にした。

以前から気になっていたことがある。嶋町長はニセコ町長のことを「世界の片山」と表現し、片山町長は余市町長のことを「宇宙の嶋」と呼んでいる、その理由だ。やっぱり現地に足を運んでみるものだ。「道の駅」に併設して「余市宇宙記念館」があったのだ。

余市宇宙記念館

宇宙飛行士・毛利衛さんが余市町の出身だと初めて知った。その彼を称える施設である。宇宙から連想できる「夢追い人」…どうやらそれが「宇宙の嶋」の語源のようだ。

ちょうどその時、携帯が鳴った。「出会いたかったのに残念。再度のお越しを…」との片山町長からの電話だった。私は「宇宙の嶋」の意味が分かったことを彼に伝えた。ちょうどそこへ車で現れたのが嶋町長ご夫妻。やっと「夢追い人」に出会えた。

嶋町長はNHKの連続ドラマ「マッサン」の舞台として余市を全国に売り出した首長である。フェイスブックで頻繁に連絡は取ってはいるが、2年ぶりの再会であった。

=つづく=

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