『ライフシフト』【図書館からおすすめの一冊】

「人間五十年、化天(けてん)の内を比ぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)のごとくなり。一度生(しょう)を受け、滅(めっ)せぬ物のあるべきか。」(新日本古典文学大系59巻・舞の本227頁より 岩波書店刊)と幸若舞(こうわかまい)『敦盛(あつもり)』では、人間の生命の儚さがうたわれています。それから、約600年。化天の8000歳には及ばないものの、人間の寿命は伸び続け、2007年に日本で生まれた子どもの半分は、107年以上生きることが予想されています。長寿は恩恵であると同時に、あらゆる常識が覆される事由でもあります。つまり、過去のロールモデルでは、有効な人生の選択が難しくなってくるのです。

この本は、豊富な論文とデータを基に筋道を立て、人生100年とする新しい生き方を、提案しています。作者は、3つの無形資産を形成する必要性を説きます。①生産性資産(スキルと知識以外に評判や信頼などの要素)②活力資産(肉体的・精神的充足感と幸福感をもたらすもの)③変身資産(多様性に富んだネットワークを使いこなし、新しい経験に対して開かれた姿勢を持つこと)です。これらを獲得するために、お金の使い方は、消費から投資へと移り、レクリエーション(娯楽)は、リ・クリエーション(再創造)へと発展し、活躍のステージは何度も変化するマルチステージへと変わるそうです。また作者は、「未来は分からない」と計画も準備もせず楽観的になると、失敗の影響が長期に及ぶことを懸念します。例えば、教育は、年齢階層型と考えず、学び直しなどを活用する異世代型ととらえ、愛昧で不確実な状況に対する判断力、意思決定能力、優しさ、思いやりを身につけよ、と主張します。

長寿を「楽しむ」のも「疲れる」と感じるのも人それぞれですが、作者が提案する無形資産を築く手っ取り早い方法は、図書館を利用することです。なぜなら図書館には、人が生み出す「英知」という「滅せぬ物」があるからです。

 

小野市立図書館  和田真由

 

書籍情報

リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット/著

池村 千秋/訳

東洋経済新報社

 

図書館からおすすめの一冊シリーズ

『役に立たない人生相談2 好きなようにやればいい。』【図書館からおすすめの一冊】

コラム 小野市