超高速 西国33番「順打ち」巡礼編 【1青岸渡寺】OB首長~気まま旅~

巡礼編のはじめに…

「超特急」での西国33カ所廻り

 

つい先日、知人が京都(宇治)に行って平等院と三室戸寺を訪ねたと話していた。昨日は母親が「テレビで三室戸寺の紫陽花がキレイといってたけど、三室戸寺って京都の何処にあるの?」と私に尋ねた。風情のない団地の中を通り、細い道を経て駐車場に着いたのを思えている。山門をくぐって長い参道を歩いたことも・・。牛の像があり、三重塔の周辺を檀家の方が清掃されていた。そういえば広い敷地に何かが植えられて大きな庭園になっていた…花は咲いていなかったが、その園内を回遊しながら歩いて下りた。段々と記憶が蘇ってきている…。

 

ちょうど1年前のこの時期に、超特急で西国33所参拝をしたのだ。1番から33番まで順を追って廻るのを「順打ち」という。移動効率は悪いがご利益が多そうなので、番外も含めて「順打ち」で廻ることに決めた。マイカーで妻と二人、4月から月に一回の参拝ペース(宿泊付き)で始めた。振り返ると4ヶ月(4回)、10日間で善光寺や高野山を含めて、ちゃんと納経帳と笈摺(おいずる)に朱印をもらいながら廻ってきた。信仰心は高く持ちながらの「超高速巡礼」ともいえる珍しい旅であった。

 

1年を経て私自身の記憶が薄れかけているということは、きっとご利益も薄れかけているはずである。三室戸寺の話をきっかけに、記憶を思い返すことにした。ご一読いただくことで、これから西国参りをされる方の参考になれば幸いだし、既に済まされた方々にはご利益が継続することに繋がればと願っている。

 

 

 第一番 那智山 青岸渡寺(せいがんとじ)

補陀洛や 岸打つ波は 三熊野の 那智のお山に ひびく滝津瀬

 

 

気を引き締めて、第一番の札所へ

4月26日(木)、自宅(多可町加美区)を出たのは7時である。途中の岸和田と和歌山のサービスエリアで西国巡礼ツアーの観光バスと一緒になった。都市部の募集ツアーだったのだろうか、意外に参加者の年代が若いのに驚いた。まだ時間は早いので、この一団も行き先は「那智山」だと勝手に決めた。高速道路を終点の周参見(すさみ)まで一気に走った。以降は下道のR42号線である。串本の橋杭岩(はしぐいいわ)で休憩したおり、ちょうど正午の時報が鳴った。奇抜な景色がキレイだった。

 

橋杭岩(串本町)

 

昼食をとりたかったが店舗は何処も小さくて満席である。JR那智駅付近にも道の駅があるとの表示があったので、そちらに向かったがレストランはなく、売店で弁当を買った。1時過ぎに昼食を食べ終え、国道を離れて那智山への道を走ると、山道に入る手前に大きなレストランが2軒もあるではないか。そこには数台の観光バスが止まっていた。勝浦から新宮にかけて、バイパス(無料)ができているので、こちらを利用した方がよかったと反省。車を進めると日本一の「那智の滝」が見えてきた。駐車場は途中に数カ所あったが通り過ぎて、一番先の土産店の駐車場に留めた。そこは目の前が青岸渡寺への階段の登り口である。覚悟はしていたが、階段は急で長い。日頃の運動不足が、こんな時に祟るのだ。

 

那智の滝

 

那智山が何故に第一番?

西国33所巡礼は、観音菩薩を祀る33カ所の古寺を巡拝するもので、約1300年の歴史を持つ日本最古の巡礼だ。草創から270年後の988年、信心深かった花山法皇が自ら33カ所を巡礼され、その法皇が歩かれた道順が33番となっている。その第一番が那智山・青岸渡寺である。法皇が当地で千日間の滝籠の修行をされたのち観音霊場廻りに出発されたことから第一番札所になったと知った。昔の巡礼地図では、那智山から熊野古道で中辺路を経て田辺に至り、海沿いを北上して次の札所に参拝するルートが描かれていた。

 

那智山に密教や観音信仰が一早くもたらされた背景には、古くから熊野地域が宗教者らの一大聖地であり、宗教的なるモノが交雑し摂取される土壌があったからだと考えられる。熊野には本宮・新宮・那智の3つの社があり、3社を総称して「熊野三所権現」と呼ぶ。のちに神仏習合により、本宮が阿弥陀如来、新宮が薬師如来、那智が観音菩薩とされ、那智には補弥落(ふだらく)信仰も興った。

 

ご本尊は「如意輪観世音菩薩」

ここは那智大滝を望む那智山の中腹にある世界遺産の霊場である。仁徳天皇の時代に、熊野灘に漂着した裸形上人が那智の滝で観音菩薩を感得し、草庵を結んで安置したのが始まりといわれている。急で長い階段を上りきると那智大社と青岸渡寺が並んで建っており、初めてだと、どっちがどっちか分からない。息を整えて心を静め、霊気を感じながら拝んだ。「ふだらくや きしうつなみは…」流石に第一番のご詠歌だけはしっかり覚えていた。境内から見えた色鮮やかな三重塔と那智の滝の見事な融和が特に印象に残っている。

 

 

長い坂道を下り、汗ばみながら駐車場まで戻った。売店の喫茶コーナーで飲んだアイスコーヒーが喉の乾きを気持ちよく潤してくれた。3時に那智を発った。帰路は新しくできていたバイパスを利用し勝浦に出た。一泊目は白浜温泉(湯崎)に宿をとっており、到着は5時前。長距離の運転で少々疲れたが、ゆっくりと温泉に浸かってから飲むお酒は格別で、すぐに生き返ることができた。

【一言アドバイス】

中国道「滝野・社IC」から6時間あれば那智山に着く。周参見ICまでは高速道路なので早いが、以降は下道を走るので意外に時間を要する。勝浦~新宮のバイパス整備が進んでおり、那智にICがある。現地では長い階段を上り、急な坂道を下る覚悟と足もとの準備がいる。参拝の所要時間は、大滝の参拝を含めると健脚者でも1時間は必要。このコースは日帰りが難しく、普通は勝浦や白浜に宿泊することとなるが、元気な方なら和歌山市内(和歌浦)まで戻ることも可能であり、2日目の行程が組みやすいと思う。

 

 

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