十角館の殺人【図書館からおすすめの一冊】


 
新本格ミステリの金字塔と言われる「館シリーズ」の第一作目です。最近では、コミックにもなっていますので、読んだことはなくても、その名を知る方は多くいらっしゃることと思います。
 
私がこの本に出会ったのは、学生時代です。当時電車通学であった私にとって、読書は通学中の密かな楽しみでした。そんな中、出会ったこの一冊。これまでにもいろいろな出会いがありましたが、これほど衝撃を受けた、そして印象に残ったものはありません。ミステリ小説好きにとっては必然的な出会いだったとも言えます。数十年経った今でも、私の大切な小説コレクションの一冊として、本棚に並んでいます。
 
この本は、ミステリ小説の名作アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』のオマージュ作品としても有名で、設定はミステリの定番、クローズドサークルです。
 
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島。そこは、半年前に館を建てた建築家・中村青司による凄惨な四重殺人が起こった場所。その孤島を、大学ミステリ研究会の学生七人が訪れます。やがて一人、また一人と殺されていく学生たち。果たして犯人は誰なのか。外部犯なのか、それとも内部犯なのか。島、本土、島、本土…と交互に場面転換しながら、深まる謎の中、犯人は誰なのかを必死に考えていきます。巧妙なトリックをくぐり抜け、最後、犯人にたどり着いた時、あなたは大きな衝撃を受けることでしょう。
 
魅力的な舞台(十角館という非現実的な建物が登場します)、個性あふれる登場人物(大学ミステリ研究会の学生にはそれぞれ「エラリイ」「カー」など欧米のミステリ作家諸氏の名に由来するニックネームが付いています)、そして鮮烈なトリック(予想外の犯人が解き明かされます)がおすすめポイントです。秋の読書にぜひおすすめします。そして、この作品を読んだなら、魅力的な「館シリーズ」の他の作品もぜひ読んでみてください。
 
小野市立図書館 藤岡 揚子

 

書籍情報

『十角館び殺人』
綾辻 行人/著
講談社
 

コラム 小野市