超高速 西国33番「順打ち」巡礼編その3【4施福寺、5葛井寺】OB首長~気まま旅~

第4番札所 槇尾山 施福寺(槇尾寺)

深山路や 檜原松原 わけゆけば 巻の尾寺に 駒ぞいさめる

 

西国巡礼の最大難所

平安時代にここを参拝した花山法皇も、あまりの山の深さから道に迷ったという「施福寺」。3番札所の粉河寺から槇尾山までの行程は、マイカーを使ってもかなり離れており、道も細くて迷いそうになる。駐車場について古色を帯びた「仁王門」までは、舗装されたなだらかな坂道を10分ほど歩く。「もう少しかな?」などと考えると、これがとんでもないのだ。ここからが難所の真骨頂。急な坂道と石段が延々と続いている。

 

施福寺の仁王門

 

急な坂道が続く

 

槇尾山は600mの山で、施福寺(本堂)は500mぐらいに位置し、駐車場との標高差は250m、距離は約1キロある。何度も足を留め、汗をかきながら青息吐息の「徒歩巡礼」(約30分)であった。

 

槇尾山 施福寺(本堂)

 

本堂の少し前の広場からは一帯の山々が見渡せ、心身ともに一服できた。弘法大師の御髪堂があり、大師はここで正式な僧侶として受戒されたと知った。ご本尊は「十一面千手千眼観世音菩薩」だが、花山法皇が奉納したと伝えられる馬頭観音(足守の観音・足を組んだ座像)が有名で、珍しく足の裏が正面から見える日本で唯一の観音様という。「本堂のお参りで、歩くことの喜びや有り難みを改めて知ってほしい」と寺僧がいわれていたが、納得はできるものの、何度もこの急な参道を登ってくる気力は湧いてこない。

 

施福寺 馬頭観音

 

折角苦労して登った寺院だが、やっぱり下りは早い(約15分)。すれ違う人に「余裕の心」で励ましの声をかけながら、テンポよく「仁王門」を通りすぎた。

 

【一言アドバイス】

何度も記すが、33ヶ所中「最大の難所」である。高齢の方には覚悟して登っていただきたい。世代を問わず、くれぐれも足下の準備は怠りなく。ハイキングではなく「登山」であるとの心の準備が必要だ。巡礼バスツアーの方々の多くは(バスの中で待たれて)添乗員が朱印を代行されると聞いたが、「施福寺」だけはその方が賢明かもしれない。「順打ち」でない場合には、一番先に、ここに参拝されることを強く奨めたい。

 

第5番札所 紫雲山 葛井寺

参るより 頼みをかくる 葛井寺 花のうてなに 紫の雲

 

山岳寺院の「施福寺」とは趣を異にし「葛井寺」は、街のど真ん中に位置する。車をすぐ近くのコインパーキングに留め、「紫雲山」との扁額が掲げられた「南大門」を通って境内に入った。この寺は、百済王族の子孫という渡来氏族・葛井氏の氏寺として建てられたという。衰退期を迎えたが、飛鳥の豪族・藤井氏がその隆興に尽くした。以後、地名と共に「藤井寺」とも記されるようになった。ご本尊の「十一面千手千眼観世音菩薩」は現存する千手観音像としては最古(奈良時代)の造作で、国宝に指定されており、実際に1043本の腕を持ち、すべての掌に慈しみをもった眼が描かれているという。

 

葛井寺 千手観音座像

 

境内には200本の多種な藤が植えられており、まもなく咲こうとする気配が漂っていた。藤と葛井寺の関係の始まりだ。これはご詠歌からも深く読み取れるのだそうだ。上の句の「頼みをかくる」とは藤の生態にちなみ、大木などの支えがなければ成長できない藤のように、人々は観音の力にすがる心が大切であると説く。また下の句の「花のうてなに紫の雲」は、紫色に咲く藤の花を、仏の聖地に棚引く紫雲に見立ててあるという。「紫雲山」の由来でもある。

 

葛井寺(南大門)

 

葛井寺(本堂)

 

西国33所のご本尊は「千手観音像」が最も多く、葛井寺をはじめ16ヶ寺もあるという。「千手観音信仰」は天平5年(733年)に唐から帰朝した法相宗の僧が伝えたという。「千」は滿数で絶対の慈悲の象徴。人間界のすべてを見通し、救済の及ぶ範囲は広大・無量であることを示し、変化観音のなかでも最大の威力を持つとされている。昔の「千」は、今でいえば「京」を超えて「富岳」となるのかも・・・。

 

【一言アドバイス】

「葛井寺」は、別名で河内の観音さんとも呼ばれているそうだ。隣には商店街があり、庶民の公園のような趣がある。当日も境内では盆栽市が開かれており、地元の人が気軽に足を運ぶ庶民的なお寺である。どんな格好での巡礼でも構わないが、マイカーでの参拝は、周辺の道路が細いうえに通行者が多く、また一方通行の路地道が多いので気をつけられたい。

 

PS:「葛井寺」は阪神高速から近いので「順打ち」に拘らなければ、いつでもお参りできるお寺である。しかし兵庫からの「順打ち参拝」だと、経路に無駄が生じる。地理的に不明で、「葛井寺」参拝後の2日目の宿泊を和歌山方面にとったが、翌日の第6番札所「壺坂寺」以降を考えると奈良方面での宿泊がベターだ。もし奈良方面での宿泊であったなら、3日目は第6番札所から第11番「醍醐寺」までの行程が実現できたかもしれない。今回の超高速33ヶ所巡礼における「最大の反省点」である。

 

 

↓こちらもあわせてどうぞ…超高速西国33番「順打ち」巡礼編その2

超高速 西国33番「順打ち」巡礼編その2【2紀三井寺、3粉河寺】OB首長~気まま旅~

コラム