知ってるつもり―無知の科学【図書館からおすすめの一冊】

 
あなたが、これまでに蓄積した知識、常識を「それって本当ですか?」なんて言われたら、「不愉快だ」と思いますか、それとも「そうかもしれない」と視点を変えてみますか?「不愉快」と思われた方は、この本を読むのをお勧めしません。なぜなら、日常生活に潜む自分のあらゆる「無知」に恐怖を覚えてしまうからです。それでも、「読むなと言われたら余計に読みたくなるじゃないか」という好奇心が勝つなら、手に取ってください。、そこから、あなたが求めて止まない、知性の本質に気づかせてくれるでしょう。
 
この本は、二人の認知科学者によって書かれたものです。前半部分では、日々目にするものについて、その仕組みをどれだけ理解しているか「それはなぜ?」を繰り返す実験をします。多くの人はほとんど何も語れなくなり、「自分が思うほど自分は、物事を知らない」ことを証明します。著者達はこれを「知識の錯覚」と名付けます。、世界があまりに複雑であるため、人類は、他の人々に蓄えられた知識と自分の知識に境界線を引かず文明を誕生させてきたと言います。そして、人類の進歩を支えたのは「知識のコミュニティ」だと示します。しかし、本書後半部分からは、それこそが諸刃の剣と説いていきます。インターネットやソーシャルメディアの普及により同じ価値観の仲間で固まり、異なる意見を排除しようとする。理解もしていない事柄に明確な賛否を示すことで蜃気楼のような意見が出来上がると警告を鳴らします。
 
私達は、自分が思っているよりずっと無知なのです。著者は、本当の賢さの基準は個人のIQではなく、集団としての能力を計測するべきだと主張します。他者の立場や感情反応を理解する能力、効果的に役割を分担する能力、周囲の意見に耳を傾ける能力なども知能の重要な構成要素なのです。
 
まずは、図書館を使い、あなたの「知っているつもり」を「分かった」に変えてみませんか。
 
小野市立図書館 和田 真由
 

書籍情報

『知ってるつもり―無知の科学』
スティーブン・スローマン/著
フィリップ・ファーンバック/著
土方 奈美/訳
早川書房

 

コラム 小野市