奏のフォルテ【図書館からおすすめの一冊】
天才ホルン奏者と言われている中学2年生の遠峯奏(とおみねかなで)。
世界で通用するソリスト──オーケストラをバックにソロを吹く独奏者になるのが彼の夢。そのために世界で一番有名な音楽学校のプレカレッジ(高校生以下)部門の入学オーディションを受ける。
その審査員の一人が、ホルンの神様と彼が小学生の頃からあこがれ続けてきた人物。
結果は…「──きみの音ね──愛がない」…不合格となってしまう。
「愛とは何か」…分からない奏。 “元・天才ホルン奏者”となってしまった。家計のこともあり彼は音楽をあきらめようとするが、同じ歳の天才オーボエ奏者や吹奏楽部のメンバーに助けられ、大それた計画を実行する。果たしてその計画とは。そしてそれは成功するのか…。
その計画の実行を通して自分の音を見つけ、音楽の喜びに目覚めていく奏。
──ああ、音が好き。ホルンが、音楽が。
主人公の魂の叫びを感じながら、まるでその場で音楽を聞いているかのような青春音楽小説。音楽に対する独特な表現もまた素晴らしい。
曲名が記されているので、実際に音楽をかけながら読むのもおすすめ。
本書は第58回(2017年)講談社児童文学新人賞佳作の「さよならシュトラウス。」を改題して単行本化、2018年7月に刊行されている。
西脇市図書館 高瀬 貴子
書籍情報
『奏のフォルテ』
黒川 裕子/著
講談社