沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか?サメ博士たちの好奇心まみれな毎日【図書館からおすすめの一冊】
インパクトのあるタイトルに引き寄せられ手に取った一冊を紹介します。
沖縄美ら海水族館というと、世界最大の魚ジンベエザメや世界初の繁殖に成功したナンヨウマンタなどの群泳を巨大水槽から楽しめることで有名な水族館ですが、注目すべきはそこだけではありません。
全国にあるほとんどの水族館では、生物の飼育や展示解説、イベントなどを主な業務として行っています。一方、沖縄美ら海水族館ではそれらの業務に加えて、職員自らが生物を観察・記録し、それらを論文として世の中に伝えることを重視しており、海外の研究者との共同研究なども行っているのです。
本書では、沖縄美ら海水族館に勤務する三人のサメ博士によって、それぞれが同館で働くに至った経緯や同館での日常、サメ研究の様子などが書かれています。
沖縄美ら海水族館での研究の成果の一つに、マンタの妊娠診断があります。マンタの妊娠はどのように診断するのか想像できますか。同館では、人間と同じエコーを導入して妊娠診断を行いました。初めに導入されたエコーは、一般的なもので水中に入れることができないため、「母体を水面近くに連れて来なければならない」、「思い通りの画像が撮れない」という難点がありました。そこで同館は防水・耐圧の「水中エコー」を業者と共同で製造します。これにより世界で初めてマンタの妊娠診断に成功し、この装置をガラパゴス諸島に持ち込んで野生のジンベエザメの腹部を映し出すことにも成功しています。
このような研究の成果は、研究者の好奇心、情熱、そして日々の努力の積み重ねによるものであり、それらは私自身にとっても忘れてはならないことのように感じます。
なぜこのような功績を残している彼らの研究が「役に立たない」と題されているのか。なぜ彼らはそのような研究を続けるのか。その答えは本書を読めば知ることができます。沖縄美ら海水族館の知られざる裏側の世界をのぞいてみませんか。
小野市立図書館 中村 一香
書籍情報
『沖縄美ら海水族館はなぜ役に立たない研究をするのか?サメ博士たちの好奇心まみれな毎日』
佐藤 圭一・冨田 武照・松本 瑠偉/著
産業編集センター