佐賀(葉隠)編【OB首長~気まま旅~】
「地中熱」の可能性をさぐる旅
佐賀を訪ねたのは昨秋のことだ。NPO法人「地中熱利用促進協会」が主催する「低炭素社会という未来をめざして」の地域交流会への誘いを受けたからだ。佐賀県が第8回目の開催地だった。
「150年前、佐賀は国の危機を感じて維新の原動力となったが、今度は温暖化に対する地球の危機を前に、再生可能エネルギー普及の先駆けとなりたい」との地元主催者の挨拶が心強かった。
「薩長土肥」と称されて倒幕の一角を担ったのは間違いないが、佐賀鍋島のイメージは「葉隠武士道」と「開明的気風」の両方だ。鍋島直正を先駆けとする開明の賢い思考と、刷新の改革風土に「地中熱利用の促進」を期待している。来賓の知事も「佐賀は地盤条件が地中熱利用に向いている」と前向きだった。
「井戸の水は、夏には冷たく、冬には温かく感じる」…これが一番簡単な地中熱の説明だ。
地中熱を冷暖房システムなどに利用すると電気代が節約されるのだ。地中熱の利活用は、大気中への廃熱がないので(室外機が不要)、ヒートアイランド現象を押さえることができる。また降雪地方では、冬場の融雪装置などにも利用が可能だ。
地中熱利用のイメージ
「地中熱」活用の状況は?
世界の普及状況をみると…
①欧米諸国では軒並み普及が進んでいる
②中国は近年国策として導入を進めている
③日本では今後の普及が期待される
と説明されている。世界で普及が進んでいる国は、アメリカ、中国、スウェーデンの順で、この3国が他国を圧倒している。
我が国でも段々と普及し始めているが歩みは遅い。東京スカイツリー地区、JPタワー、羽田空港(国際線ターミナル)、鉄道施設(小田急の地下ホーム)などは、既に地中熱を活用した冷暖房システムが導入されている。他にも公共施設(庁舎・消防署・病院など)、温水プール、データーセンター、融雪利用や農業用途での利用も増えてきているようだ。老人介護施設など終日操業の施設ほど同システムは有効のようだ。
環境省が補助制度を設けて啓発しているが、西日本での普及が全く進んでいない。ネックは初期費用が高くなることだが、ランニングコストは安く、長期的利用だと現状価格と変わらない。ハイブリッド車の購入と似ている。
地中熱利用の状況=日本は後進国=
関西での研究会…立ち上げに参画
そこで有志で「関西地中熱利用研究会」を立ち上げた。最高技術顧問は京都大学名誉教授の芦田譲先生(再生エネルギー分野の権威)にお願いした。まだ生まれたばかりの「ひよこ組織」だが、関西での普及を図っていきたい。
「葉隠ホール」に小城(おぎ)の女性が…
私はFB(フェースブック)で佐賀での地中熱イベントの様子を時々刻々と伝えていた。ちょうど意見交換会の最中に携帯が鳴り慌てて取ると「いま、扉の外に来ています」との女性の声?
「地域に飛び出す公務員の会」のメンバーで、以前に何度かお出会いしたことがあり、FB友達でもある小城市役所の坂田女史(建設部定住推進課長)だった。佐賀を訪ねたお礼ということで、お土産(小城羊羹と佐賀のり)をいただいたのだ。チャーミングな女史とのビックリの再会に感謝した。左党の私は知らなかったが、小城羊羹は有名で「日本一美味しいのだ」と母親から聞かされた。
小城羊羹は全国ブランド
小城市は佐賀市の隣接市だ。翌日には地中熱活用モデル住宅の現地視察があり、視察先が小城市内(小城駅西団地)だったことに、更にビックリが加わった。小城は進んでいるのだ。
【後日譚】…佐賀から戻って直ぐに葉室麟の最後の長編小説「影ぞ恋しき」を読んだ。主人公の雨宮蔵人が「小城藩士」だったことにも、またまたビックリ。作品の中には佐賀藩と支藩の小城藩の関係や「葉隠」を纏めた山本常朝も描かれている。坂田女史に再度のお礼を伝え、葉室本の紹介をしたのはいうまでもない。
(ふるさと未来塾 主宰 戸田善規さん)
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